2026.02.062026.02.06

モンスターパートとは、職場に悪影響を及ぼすパートタイマー従業員を指して、最近よく使われている言葉です。
モンスターパートに頭を悩ませている店長やマネージャー様は、なんとかして「辞めさせたい」とお考えでしょう。
しかし、パートといっても労働者の立場は法律で強く守られており、「解雇」するのは簡単ではありません。
そのため現実的には、「退職推奨」という方法によって、モンスターパートの従業員と双方納得の上で辞めてもらうよう働きかけるのが得策です。
そこで本記事では、モンスターパートを辞めさせる方法を、5つのステップに分けて解説していきます。
法的トラブルが起こらない、それでいて現実的な対処法を述べていきますので、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
モンスターパートを辞めさせることはできるが、「解雇」するのは簡単ではない
モンスターパートといっても「仕事覚えが悪くて困る」「態度が大きい」などの理由では、労働契約法でいう解雇事由の「客観的に合理的な理由」とは言えないため
解雇できないモンスターパートは、「退職推奨」をして自分から辞めるよう促す方法がおすすめ
モンスターパートを辞めさせる手順は以下の5ステップ
モンスターパートの問題行動を記録し、本人に確認をとる
問題のある行動・態度について注意・指導する
始末書や誓約書を提出させる
「退職推奨」をする
解雇する
間違った方法・手順で辞めさせると、パート側の方から損害賠償請求される、などのリスクがあるので注意!
採用の時点で契約期間を短く設定するなど、モンスターパートを辞めさせやすい環境作りも大切
さっそく本題です。モンスターパートを辞めさせることはできるのか。
結論からいうと、辞めさせる方法はありますが、「解雇」という形で辞めさせるのは難しいです。
冒頭で述べたとおり、日本では労働者(パートも含め)の立場が法律によって強く守られており、簡単には解雇できないルールになっているからです。
「モンスターパート」とはいいますが、多くの場合、彼らは「解雇」に値するほど深刻な規則違反・法令違反まではしていないケースも多いでしょう。
そこで現実的な手段として考えられるのが「退職推奨」という、モンスターパートに自主的な退職をうながす方法です。
ここまでは概要ですので、以下より順序立てて詳しく解説していきます。
解説にあたって、「モンスターパート」をきちんと定義づけしておく必要があります。
モンスターパートの法的な定義はありませんが、本記事では「モンスターパート」を自己中心的に振る舞い職場環境に相当な悪影響を及ぼす人物とします。
なお、法律上はパートとアルバイトとを区別していませんので、本記事の内容はアルバイトの方をやめさせる場合についても参考にしていただけます。
モンスターパートの具体的な特徴としては、次のような点が挙げられます。
【例:モンスターパートの特徴】
長年働いているため業務内容には精通している。
自分がする業務は楽な内容を選び、やりたくない業務を他人に押しつける。
勤務年数の長さから社員・パート関係なく高圧的な態度をとる。
気に入らない社員・パートの悪口を他の従業員にいう。
気に入らない社員・パートに無視などの嫌がらせをする。
新人に対し、自分がやりたくない業務を行うよう指示するだけで教えようとしない。
雇ってみたが新人教育をしても反抗的な態度をとる。
仕事内容を覚えようとしない。
業務に必要な最低限度のスキルがなく、また習得しようともしない。
このように、職場に悪影響はあるものの、「解雇」できるほど著しい規則違反をしているわけではない。
読者様の職場にも、このような「迷惑なだけ」のモンスターパートがいるのではないでしょうか。
これがモンスターパートを辞めさせる上で、逆に難しいところです。
この記事をご覧の方の中にはパートは正社員ではないから簡単に解雇できると思っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
ところが、パートであっても簡単に解雇することはできません。
(引用)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする
引用元:労働契約法16条
むしろ契約期間が定められているパートについては原則として解雇することはできないとされています(労働契約法17条)。
やめてほしいモンスターパートが有期雇用(働く期間が定められている契約)なのか無期雇用(働く期間が定められていない契約)なのかによって解雇の条件・手順がことなります。
そこで、以下ではパートを解雇することができる条件を確認し、その後に解雇するときの手順をみていきましょう。
先に述べたとおり、パートであっても従業員を解雇するのはハードルが高いです。
また、解雇が争われ、無効と判断されるとモンスターパートを雇用し続けなくてはなりません。
そのため、まずは自主的な退職を促す「退職勧奨」を行うことをおすすめします。
なぜなら、退職勧奨に応じてモンスターパートが退職した場合は、解雇ではないため、そもそも解雇が無効だと争うことが困難となるからです。
そこで、まずは面談を行い、どうして退職をしてほしいのかを伝え、退職に同意してもらえるよう説得を試みてみましょう。
モンスターパートが「迷惑なだけ」であれば解雇は難しいと述べましたが、もちろんかなり悪質なパートであれば、解雇できます。
また、解雇できる条件はパートとの契約が有期雇用(働く期間が定められている契約)なのか無期雇用(働く期間が定められていない契約)なのかによってもことなります。
そこで、以下ではパートを解雇することができる条件を確認していきます。
労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。
そのため、モンスターパートを解雇するには、解雇が「客観的に合理的」であると認められることが必要となります。
従業員を解雇するには、その従業員の勤務態度に大きな問題があったり、業務に支障をきたしている必要があります。
たとえば、
自分は楽な業務のみ行い、面倒な業務は他人に押し付ける。
雇ってはみたものの、新人教育を行っても、聞く耳をもたず、反抗的な態度をとる。
業務に必要な最適限度のスキルがなく、また教えても習得しようとしない。
遅刻や欠勤を繰り返す。(具体的には月5回以上を3ヶ月程度)
(接客業の場合)お客様と何度もトラブルになる。
これらの行動が常軌を逸している場合は解雇の理由となります。
このような問題行動がある場合は、まず、その問題行動、ミスを正確に記録し、客観的に示せるように残してください。
最低限、問題行動やミスを指摘した事実が記載されたメールなどを残しておくべきです。
なお、問題行動やミスの指摘は発覚直後がベストです。
また、指摘するだけでなく、その原因を確認するために、モンスターパートへ直接聞き取りを行い、その内容を録音しておきましょう。
逆に、単純に仕事のミスが多い(仕事覚えが悪い)、態度が高圧的であるという理由だけでは解雇の合理的な理由があるとは認められません。
①で挙げた問題行動やミスが解雇する「客観的に合理的な理由」と認められるには、繰り返し注意や指導をしたが、それでも改善されなかった、という実績が必要です。
繰り返し指導を行い、改善のチャンスを設けたにもかかわらず、改善されないことでようやく、解雇する合理的な理由と認められるからです。
また、これを証明するために、何度も面談と指導を行ったことを客観的な資料として残しておく必要があります。
面談資料や指導内容を求めた資料があればいいですし、面談・指導内容をメールなどで送り、繰り返し指導したことを後々示せるようにしておきましょう。
雇用契約書に契約期間が定められていないパートを解雇する方法は、正社員を解雇する場合と変わりありません。
すなわち、解雇するにあたっては30日以上前に解雇を予告すること、または解雇予告しない場合には30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(労働基準法20条1項)。
「有期雇用」とはつまり、雇用期間の定めがあるということです。
この方法で採用したパートについては、契約期間の満期をもって雇用契約を終了するのが基本ルールです。
契約期間の途中で解雇することは原則として禁止されており、解雇するためには「やむを得ない事由」が必要とされています(労働契約法17条1項)。
この「やむを得ない事由」を認めた裁判例はほとんどなく、契約期間中の解雇は大半が不当解雇として判断されていますので注意しましょう。
その中でもさらに細かくいうと、以下の2つのパターンに分けられます。
当初の契約期間の満了による契約の終了
契約更新後の契約期間の満了による終了
モンスターパートの雇用契約書に契約期間が定められている場合、雇用契約書に記載されている契約期間の満期をもって雇用契約を終了できます。
この方法がもっとも穏便にモンスターパートをやめさせることができます。
この方法はそもそも「解雇」ではなく「雇止め」といわれるものです。
契約期間を定めて雇用した場合、雇われた側も働くことができる期間は雇用契約書に記載されている契約期間であることを了承したうえで働いていたのですから、契約期間が過ぎれば働けなくなることは当然といえます。
雇用契約書でもとから契約期間満了後の更新はしないと明記されている場合は、契約期間の満了により契約終了となります。
契約期間を定めて雇用した場合であっても、契約期間の満了時に契約期間を更新して何か月、何年も働いているパートもいるでしょう。
このように更新後の契約期間の満期をもって雇用契約を終了させること(=雇止め)が認められるためには、たとえば「更新の理由が一定期間の作業により終了する臨時的な業務を行うため」であったことや「当初から雇用者側に長期契約を期待させる言動がなかった」ことなどが条件となります。
何度も契約期間が更新されているパートについては、実質的に無期契約と同じであると評価されることもあります。
また、パート側では今回も更新されるものだと期待することについて合理的な理由がある場合には、更新しないことに合理的な理由がない限り契約が更新されたものとみなされてしまうことがあります(労働契約法19条)。
さらに、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務しているパートに対して契約を更新しない場合には、30日前までに予告しなければならないとされていることにも注意が必要です。
平成24年の労働契約法の改正により、平成25年4月1日以降に契約した期間の定めのある雇用契約について、パートであっても⑴同じ会社との間で2回以上の期間の定めのある雇用契約を結び、⑵通算の契約期間が5年を超えた場合には⑶パート側が無期契約への転換を申し込むと、契約期間の定めのない雇用契約となります。
このような場合も解雇の方法は上記と同じく正社員を解雇する場合と変わりないことになります。
冒頭に述べたとおり、モンスターパートを辞めさせる方法としては、「解雇」または「自主的に退職させる(=退職推奨)」の2つとなります。
いずれにしてもしっかりとステップを踏むことが重要です。
パートを含む労働者の解雇はハードルが高く、最後の手段です。
そのため、以下の各ステップでモンスターパートが自ら退職の意向を示してくれれば、紛争の原因になりやすい解雇という手段をとらずにすみます。
先ほども述べましたが、問題行動やミスを確認したらすぐに指摘し、注意・指導を行うようにしましょう。
何度も改善の機会を設けたということが解雇するための第1ステップです。
モンスターパートに問題行動やミスを認識させ、指導を行ったことを客観的に示すためにも、モンスターパートに始末書や誓約書を提出させるという方法もあります。
ただし、モンスターパートがこれらを提出してこない場合もあります。
そこで、メールなどで何度も提出を求めたことがわかるように残しておきましょう。
繰り返し注意・指導を行い、始末書や誓約書の提出を求めることで、モンスターパート自身に問題行動やミスを認識させることができます。
そのうえで、改善を求めたが改善されていないことをしっかりとモンスターパートに告げ、退職を求めてみてください。
モンスターパートが退職に応じれば、解雇することなく辞めてもらうことができます。
それでもなお、退職勧奨に応じず、かといって問題行動やミスを繰り返す場合には、解雇を検討しましょう。
もっともいきなり解雇を選択するのではなく、次に同じような問題行動やミスが発覚した場合は解雇となることを告げる、など段階を踏むことが重要です。
解雇の手順を踏む、または退職勧奨を行うにあたってのNG行動があります。
NG行動を行っていると、退職勧奨に応じて自主的に退職した場合であって退職合意の有効性や解雇の有効性にかかわります。
以下のNG行動はとらないように注意しましょう。
モンスターパートの問題行動やミスを注意・指導するにあたっては、まず本人の言い分をきちんと聞く必要があります。
特に問題行動やミスを直接確認したわけではなく、他の従業員から伝え聞いた場合は、注意された側からすると全く異なる認識かもしれません。
まずは、問題行動やミスについて本人に説明する機会を与え、
なぜ問題行動やミスが起きたのかについて、本人の言い分を聞きましょう。
そのうえで、指導するときは、問題点を端的に伝えることが重要です。
モンスターパートに自ら辞めてもらうようにするため、決まっているシフトを勝手に変更し、勤務日を減らすという方法をお考えの方もいるのではないでしょうか。
しかし、決まっているシフトを同意なく勝手に変更することは違法となりえます。
また、そもそもシフトに入れないという手段も考えられます。
ですが、特定の者に対してシフトに入れず、契約書に記載されている労働時間から著しく少ない場合には違法と判断される可能性があります。
退職推奨が現実的におすすめの手段だと述べましたが、この時、モンスターパートに強い圧力をかけてはいけません。
退職勧奨はあくまでも勧奨であり、モンスターパート自身が納得して退職を選択するというものです。
そのため、退職しないならシフトに入れない、減給するなど圧力をかけた場合、その場では退職に応じたとしても、後々争われる可能性を残すことになります。
端的に問題行動やミスが繰り返され、改善の見込みがないことを伝えたうえで、退職するように促すということを意識してください。
ここまでに説明してきたパートを雇止め・解雇できる条件がないままモンスターパートをやめさせた場合、以下の3つのリスクがあります。
【リスク①】損害賠償請求される
【リスク②】紛争解決のコストがかかる
【リスク③】会社の社会的評価の低下
雇止めや解雇は生活の経済的基盤を失わせるものです。
そのため、合理的な理由がない場合や直ちに解雇した場合には、雇止めや解雇をどうしても避けたいパートから「解雇は無効だ」であると争われ、損害賠償請求がされるリスクがあります。
解雇の無効を争われるなど労働関係の訴訟は解決までに長期化することが多いです。
長引けば長引くほど、会社はその分そのため、時間的コストや、弁護士費用も含めた経済的費用がかかります。
強引に解雇をした場合、モンスターパートがSNS上で騒を大きくするリスクがあります。
「違法な解雇処分を受けた、パワハラを受けた、ブラック企業だ」などといった書き込みを行い、会社の社会的評価が低下することも考えられます。
モンスターパートのやめさせ方を間違えるとこれらのリスクがあるため、雇止めや解雇をすることが可能か、その前提となる条件を確認することが大切です。
ここまでご覧いただいたとおり、モンスターパートといえど、辞めさせるのは一筋縄ではいかないものです。
また、パートを募集するときに面接段階でモンスターパートになる可能性を見抜くことは容易ではありません。
採用当初は人柄に問題なかったのに、長年働くことによって変わってしまうこともあります。
そこで、モンスターパートだった時に備えて雇止めをしやすい雇用契約書を作成しておくことが大事になってきます。
以下で、その具体的なコツを述べていきます。
これまで説明したとおり、契約期間の定めがあるかないかでパートにやめてもらう条件が異なります。
契約期間の定めがない契約の場合、解雇せざるを得ない客観的・合理的理由があり、他の処分では改善できず解雇するほかない状況であることが必要となり、やめさせるためのハードルは高くなります。
業務内容になれることができるか、人柄はどうかといったことを観察するためにも、まずは契約期間の定めがある契約書を準備しましょう。
特に新人を採用するときには、その人が業務上必要なスキルを備えているのか、他の従業員と良好な関係を築いていけるのかを確認し、もし、最低限度のスキルがなかったり、仕事を覚えようとしない、人柄に問題があることが発覚した場合には早い段階でやめてもらうことができるように契約期間を短めに設定することも一つの方法です。
契約期間の定めがある場合であっても、契約期間の満了後に更新されることは多々あります。
人手不足のため更新することが決まっているとしても、契約期間の満了前には面談を行い、更新時に更新された内容の契約書を作成することをおすすめします。
もし、雇用契約書が採用当時でしか取り交わしておらず、契約期間満了後も更新の手続を行うことなく、パートが勤務し続けていた場合、更新があったとされ、期間の定めのない契約が締結されたものと推定される可能性があります。
そうなると辞めてもらうためのハードルは高くなってしまいます。
解雇する場合には、客観的に合理的な理由が必要です。
そして、客観的に合理的な理由があることを示せるように、問題行動やミスがあった場合は、その内容を記録しておきましょう。
また、何度も指導し、改善を求めたこともわかるように、指導・注意内容も残しておきましょう。
パートであっても簡単にやめさせることはできません。
とくに契約期間が定められているパートを契約期間途中にやめさせることは基本的にできません。
モンスター化したパートをやめさせることができるようにするためには、事前に更新の有無や更新日、更新のための条件などを記載した雇用契約書を準備しておくことをおすすめします。
初めて採用するパート向け、勤務態度に問題がないパート向け、モンスターパート向けなど数種類の雇用契約書を用意しておくとなおよいでしょう。
また、無期雇用のパートを解雇する際には、しっかりと記録を残し、手順を踏むことが、後で紛争になった場合に解雇が有効であると認められるためにも重要です。
契約書作成にお困りの場合や解雇の手続に不安がある場合は、弁護士に相談することで、トラブル防止に効果的な内容の契約書を準備することができます。
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2026.02.05・最終更新日:2026.02.06
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